はじめに|速読の良い面だけを信じていませんか?
速読には、「時間を節約できる」「本をたくさん読める」「情報収集が速くなる」といったメリットがあり、多くの人が関心を持ちます。しかし、やり方や目的を誤ると、かえって逆効果になる場合もあるのです。
このページでは、速読の代表的なデメリットを正直にお伝えしつつ、「なぜそうなってしまうのか?」を丁寧に解説していきます。そして、最後にはそうしたリスクを回避するためのヒントもお伝えします。
速読の主なデメリット6つ
理解力が落ちると感じることがある
速読を始めたばかりの方が最初につまずきやすいのが、「何となく読んだけど、内容が頭に残っていない」という感覚です。これは、速く読もうとするあまり、“理解する”ことよりも“ページをめくるスピード”に意識が向いてしまうことが原因です。
もともと速読は「理解を保ちながらスピードを上げる技術」ですが、練習が不十分な状態ではどうしても「読むことそのもの」が目的化してしまい、内容を深く追えなくなってしまいます。
このような状況では、速く読めたとしても、読書の本質的な意味——理解・共感・内省など——を得ることが難しくなります。
読んだことを忘れやすい
速読では、一つひとつの言葉や文章をじっくり味わう時間が短くなるため、「読んだはずなのに、何が書いてあったか思い出せない」と感じる方も少なくありません。
特に、読み終わったあとに感想を書いたり、人に話したりといった“アウトプット”の時間を取らないと、記憶への定着が弱まりやすいです。
つまり、速読と記憶力の関係は、読むスピードそのものよりも「読後の振り返りをどれだけ意識しているか」に大きく左右されます。
そのため、「速読=記憶が定着しない」というより、「速読だけで完結してしまう読書習慣」が問題なのです。
疲れる・集中力がもたない
速読は、視線の動かし方や思考の切り替えを意識的にコントロールする必要があるため、慣れないうちは脳にも目にも大きな負荷がかかります。
特に初心者の段階では、「ちゃんと読めているか」「速く読みすぎていないか」と頭の中であれこれ考えながら読むことになるため、普段の読書よりもはるかにエネルギーを消耗します。
読書に“癒やし”や“リラックス”を求めている人にとっては、こうした負担がストレスとなり、「読書が楽しくなくなった」と感じてしまうこともあるでしょう。
本の内容を軽く見てしまう危険性
速読に慣れてくると、「どんな本でも短時間で読める」感覚が身についてきます。しかしそれがかえって落とし穴になることもあります。
たとえば、哲学書や心理学の名著、小説などの文学作品は、一文一文の深い意味や余韻を味わうことに大きな価値があります。そういった本を速読で読み流してしまうと、著者の意図や本質的なメッセージを受け取りきれず、“わかったつもり”になって終わってしまうことも。
「速く読むこと」は手段であり、それが目的になってしまうと、本との向き合い方が浅くなってしまう危険性があります。
“たくさん読むこと”が目的になってしまう
速読のスキルが身についてくると、「1日1冊」「月に10冊」など、読書量を数字で示すことに達成感を覚える人が増えます。たしかに多読の習慣は素晴らしいことですし、短時間で多くの知識に触れられるのは速読の大きな魅力です。
しかしその一方で、「何冊読んだか」ばかりに目が向いてしまい、「そこから何を得たか」や「どう行動に活かすか」という本来の目的を見失ってしまうこともあります。
読書とは本来、人生や仕事を前に進めるための“道具”であり、“成果”は読んだ冊数ではなく、「得た知識をどう使ったか」によって測られるべきです。たくさん読むこと自体をゴールにしてしまうと、学びの本質から遠ざかってしまうかもしれません。
すべての本に向いているわけではない
速読は非常に便利な技術ですが、どんなジャンルの本にも万能というわけではありません。
たとえば、法律書や専門性の高い学術書、哲学書などは、前提となる知識や背景を理解しながら、行間を丁寧に読み取る“精読”が必要な場合が多いです。
また、小説やエッセイなど、表現や感情をじっくり味わいたい本に速読を適用すると、内容を軽視してしまう可能性もあります。
「どんな本でも速読でいける」という過信は禁物です。本の種類や自分の目的に応じて、速読と精読をうまく使い分けることが重要です。
速読に向いていない人・場面とは?
知識の土台がまだ少ない初心者
読書に限らず、あらゆるスキルには“土台”が必要です。速読も例外ではなく、ある程度の語彙力や文脈理解力があって初めて効果を発揮します。
特に、これから新しい分野を学ぼうとする初心者が速読だけを頼りにすると、「分かったつもり」「読めた気になっただけ」で終わってしまうことがあります。
知識や経験がまだ少ない段階では、まずは“ゆっくりでも確実に意味をつかむ読み方”を大切にすることが、結果的に速読につながる近道になるのです。
読書を“癒やしの時間”として楽しみたい人
読書には「情報を得る」以外にも、心を癒やしたり、日常のストレスから解放されたりする効果があります。たとえば、好きな作家の小説をゆっくり味わいながら読む時間は、まるで自分だけの贅沢なひととき。そこにスピードを持ち込むと、楽しみが半減してしまうことも。
速読はあくまで「目的を達成するための手段」であって、すべての読書体験を効率化する必要はありません。もし読書を“リラックスの時間”として大切にしているのであれば、速さよりも“心の満足度”を優先したほうが豊かな時間を過ごせるでしょう。
深い理解やアウトプットが求められる場面
読んだ内容をもとにプレゼンをしたり、レポートや記事を書くような場面では、表面的な理解ではなく“本質をつかむ力”が求められます。
このような状況では、速読で得た情報だけでは不十分な場合があります。文脈の微妙なニュアンスをつかみ、根拠や背景まで深く理解するには、ある程度じっくり読み込む必要があるからです。
また、アウトプットの質を高めるには、「なぜそう考えたのか」「その情報をどう使うのか」といった自分なりの思考プロセスが欠かせません。こうした深い思考には、スピードよりも“熟考する時間”が重要となることが多いのです。
速読のリスクを回避するには?うまく活用する3つの視点
速読は「目的によって使い分ける技術」
速読は「すべての本を速く読めば良い」という万能な読み方ではなく、「目的に応じて使い分ける技術」として捉えることが大切です。
たとえば、情報収集や全体像をざっとつかみたいときには速読が非常に有効です。一方で、深い理解が必要な内容や、自分の内面と対話するような読書には、じっくり読む“精読”の方が適しています。
「何のためにこの本を読むのか?」という読書の目的を最初に明確にしておけば、速読が役立つ場面と、そうでない場面を自然に見分けられるようになります。速読は、読書の幅を広げる“選択肢の一つ”として活用するのが理想です。
「理解しながら読む」が速読の基本
速読という言葉には、「とにかく速く読めばいい」「一度で全部覚えられる」というような誤解がつきものです。しかし本来の速読とは、「意味を理解しながら、読むスピードを上げていく」ための読み方です。
たとえば、一文字ずつ目で追うのではなく、単語や短いフレーズごとに視線を動かしたり、意味のまとまりで情報を処理する工夫をしたりすることで、自然と読むスピードが上がっていきます。
このように、ただページを速くめくるのではなく、“内容をしっかり理解する”ことを前提としたスキルであることを忘れずに、丁寧に身につけていくことが大切です。
正しいやり方と段階的な練習が必要
速読は、短期間で急激に習得できるような魔法のテクニックではありません。むしろ、筋トレや語学学習と同じように、少しずつ段階的にトレーニングを重ねていくことで、着実に効果が現れていく技術です。
たとえば、「視線をスムーズに動かす練習」「意味のかたまりで読む練習」「黙読スピードの記録と分析」などを繰り返し行うことで、無理なく読書スピードと理解力を高めていくことが可能になります。
また、自分に合った方法で取り組まないと、逆に混乱したり疲れたりして、読書自体が苦痛になってしまうこともあります。だからこそ、基本を押さえながら「自分に合ったペースで、無理なく継続すること」が、速読を習得するためのもっとも大切なポイントです。
まとめ|速読を安全に取り入れるために
ここまで、速読のデメリットとその原因を詳しく見てきました。たしかにリスクもありますが、「正しく使えば強力なツール」でもあるのが速読です。
だからこそ、「速く読む」ことばかりに目を奪われるのではなく、「どんな目的で読むのか?」「そのために速読は有効なのか?」を常に問い直す視点が大切です。
そして、こうしたデメリットを回避しながら、初心者でも無理なく取り入れられるコツを知ることで、速読のメリットを最大限に引き出すことができます。
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