資格試験の勉強で「何度読んでも頭に入らない」と悩む人へ。理解力を高めるカギは“じっくり丁寧に読む”ことではなく“読む順番”にあります。本記事では、合格者が実践する「効率的な精読法3ステップ」と「過去問を使った理解・記憶サイクル」を詳しく解説。心理学のフロー理論や速読の科学も交えながら、読む・理解する・定着させる学習リズムを紹介します。

「読んでも頭に残らない」~その原因は、読む順番にある

資格試験の勉強をしていて、こんな経験はありませんか?
「テキストを何度も読んでいるのに、頭に入ってこない」
「理解したつもりでも、いざ問題を解くとわからなくなる」

多くの人は、“じっくり丁寧に読んで、しっかり理解しよう・覚えよう”と努力します。けれど実は、「テキストを読むスピード・順番・戦略」こそが理解を左右するのです。

読む前に全体像をつかみ、復習を重ねながら読み進め、読んだ後に過去問で定着させる。この「読む順番」を整えるだけで、理解力と記憶力は劇的に変わります。

この記事では、行政書士、社会福祉士、ケアマネージャーなど国家資格に合格した著者が実践している「効率的な読む技術」を、脳科学・心理学・速読メソッドの観点から具体的に解説します。

テキストを「速く理解する」ことは可能なのか?

多くの人は「速く読むと理解が浅くなる」と考えます。たしかに、一般的に読むスピードを上げると理解度が落ちる傾向はあります。それは“脳の情報処理がスピードに追いついていない”状態だからです。

資格試験の勉強をしている方の中には、膨大なテキストをなるべく時間をかけずに読めるように速読を身に付けたいと思っている方も多いと思います。しかし、やみくもに「読むスピードを上げる」ことを考えると、資格試験の勉強には対応できません。

資格試験に活かすことができる速読に必要なのは、“速く読む訓練”ではなく、“理解できる速度を上げる訓練”です。

心理学者ミハイ・チクセントミハイのフロー理論によると、人は「課題の難易度」と「自分の能力」が釣り合うとき、最も集中力が高まり、深い没頭状態(フロー)に入ります。つまり、読むスピードを無理に上げるのではなく、「理解が保てる限界速度」を少しずつ広げていくことが重要なのです。

熟練読者が速く読めるのは、単語を一語ずつ追うのではなく、意味単位(チャンク)で読むからです。例えば、

「犬が/走って/ボールを/追いかけた」

という文を、

「犬が走ってボールを追いかけた」

という一つの“意味のかたまり”として捉える。これがチャンク化です。チャンク化が進むと、目の動きに無駄が無くなり、理解のスピードが格段に上がります。

また、その際に「黙読できるスピードを少しずつ上げていく」ということも必要です。速読というと、「パッと見るだけで理解できる」というような読み方をイメージする方もいると思いますが、簡単な自己啓発書程度ならともかく、内容をしっかり理解する必要がある資格試験のテキストには、まったく対応できません。

詳しくはこちらのページに詳しく書いてありますのでご確認ください。

合格者が実践する「効率的な精読法」3ステップ

多くの受験生が「勉強=テキストを読んでノートにまとめること」と思い込んでいますが、実際は「読む前」「読み進める間」「読んだ後」をどうするかで、理解の深さは決まります。ここでは、著者が資格試験の際に共通して実践している「テキストの読み方」3つのステップを紹介します。

読む前:目次を見て構造を把握する(全体像)

最初にすべきは、全体の地図を描くことです。

資格試験の多くは、科目ごとにまったく内容が異なる場合が多いです。例えば行政書士の試験では、「憲法」「民法」「行政法」など、社会福祉士の試験では「高齢者介護」「生活保護制度」「福祉行政」など、それぞれの科目ごとテキストが分かれていることがほとんどです。

このような場合、「どの科目から取り組み始めるか」という点もポイントになるので、全体の地図を描くことが大切になるのです。今はインターネットで試験ごとの攻略法などもたくさんありますので、まずは資格試験全体の戦略を描きましょう。

その上で、各科目のテキストの勉強について。いきなり読み込まず、まずは目次を眺めながら「この章はどんなテーマ?」「どの章が重要?」と考える。それだけで、これから読む内容が“どこに位置づく知識なのか”がわかります。

脳は未知の情報を処理するとき、まず「枠組み(スキーマ)」を必要とします。このスキーマがないまま読むと、情報が整理されずに流れてしまうのです。だからこそ、「読む前に構造をつかむ」ことが理解の第一歩です。

読み進める間:こまめに重ねて読む(1章・2章・3章→翌日は2章・3章・4章…)

テキストを全部一気に読んで覚えることはできません。特に範囲が広くなればなるほど、読んだそばから忘れていきます。著者も必ずテキスト全体に一度目を通しますが、それは「内容を理解するためではなく、全体像を把握するため」です。

内容を理解するためにテキストを読むときは、少しずつ復習しながら重ねて読むことを大切にしています。たとえば今日1章・2章・3章を読んだら、翌日は2章・3章・4章、その次の日は3章・4章・5章、という感じです。常に前日分を復習しながら進めることで、「忘れる前に復習する」ことになり、自然に記憶が積み重なります。

ここで重要なのは、頑張って覚えようとしないこと。繰り返すうちに、内容が“脳に染み込む”ように理解が深まるのです。これは、無意識に長期記憶の統合を起こす最も自然な勉強法です。

また、試験で必要とされる細かい知識は、テキストを読むだけでは身に付かず、アウトプットが絶対に必要になります。インプットはなるべく時間を掛けずに、「概念や専門用語に馴染みを付けてなんとなく理解する」程度で終わらせ、アウトプットに移ることが効果的です。

読んだ後:過去問で確認し、アウトプットで定着

テキストをどれだけ丁寧に読んでも、「読むだけ」で終わらせると、知識はすぐに消えてしまいます。理解を定着させるには、アウトプットが欠かせません。

とは言っても、アウトプット=ノートを作ることではありません。テキストを見ながらノートを作っても、実はアウトプットにはならないのです。「一旦記憶に入れ、それを自分で出す」という過程で、初めて記憶に定着します。

そこでフル活用したいのが過去問です。過去問に繰り返し取組、「知っているつもり」を「使える理解」に変えましょう

過去問を使った「理解→記憶→定着」サイクル

「過去問はテキストでの勉強が終わった後、最後に確認のために解くもの」だと思っていませんか?実は、合格者はまったく逆です。資格試験の勉強では“過去問を軸にして、理解の定着を図る”のです。

過去問は理解力の“確認装置”として使う

テキストを読んでも、どこが理解できていないかは自分では気づきにくいものです。どれだけしっかり丁寧に読みこんだつもりでも、確認問題などをすると理解できていないことが多いのです。

テスト勉強において、この「分かっているつもりなのに分かっていない」は大敵。しっかりと「何が理解できていて、何を理解できていないのか」を確認する必要があるのです。

そこで、過去問を軸に勉強を進めるのです。過去問を解くと、すぐに“理解できていない部分”が見えてきます。これが最も効果的な自己診断ツールになります。

過去問を解いた後、「わからなかった問題」の解説を読みましょう。解説だけでは不十分な場合は、テキストの該当箇所を読み返します。この順番に変えるだけで、理解度は一気に上がります。「問題→解説→テキスト」という流れを作ると、読むことが「目的」から「確認」に変わり、記憶のネットワークが強化されるのです。

過去問も色々な所から出版されていると思いますが、「解説が充実している」かどうかが選択の大きなポイントになります。

理解が不十分でもまずは解いてみる

テキストを数回読んだだけでは、過去問に取り組んでも正解できないことがほとんどです。それでも、理解できていなくても、まずは解いてみる。その後、間違えた問題の解説を読んで「なるほど」と納得する。このプロセスを繰り返すうちに、「理解済み」「未理解」の区別が自然に明確になります。

分かった問題には×印を付けて“理解済み”とし、わからなかった問題を中心に再挑戦する。これを数回繰り返すだけで、理解度は驚くほど上がります。「過去問を解くこと=記憶を定着させること」という認識に変えるだけで、学習効率は劇的に上がります。

合格者が「やらない勉強法」「やる勉強法」

勉強で成果が出ない人ほど、「効果的な勉強法」がわからず、「非効率な勉強法を漫然と続けている」ということがあります。注意しなければいけないのは、「勉強している気にはなるが、実は成果が低い勉強法」を一生懸命続けている、という状況です。

「ノートをきれいにまとめる」というのは、その典型でしょう。テキストに書いてあることをそのままノートにまとめるだけでは、記憶への定着という点においてはほとんど意味がありません。もし、「どうしてもノートにまとめないと勉強した気にならない」というのであれば、テキストに目を通した後に、“テキストを読まず、記憶を頼りにノートにまとめる”ことが必要です。

「書くこと=アウトプット」だと思っている方も多いと思いますが、試験勉強で大切なのは「記憶に入っている情報を思い出すことができる」ということです。記憶から引き出す作業を繰り返すことで理解が定着してくるのです。

ただ、「資格試験の勉強」ということで言えば、どのような方法であれ、ノートにまとめるというのはお勧めできません。なぜなら、「時間がかかり過ぎる」からです。

ノートをまとめる時間があるのであれば、その分過去問を繰り返す。ほとんどの資格試験は、基本的に答えは選択式、つまり「聞かれた問いに対して正しい答えを選ぶことができればいい」のです。

論述試験がある難関資格の場合はこれだけでは不十分だと思いますが、仕事をしている人が資格試験の勉強をするときは時間も限られますので、この点を割り切ることが大切です。

「読んだ量」ではなく、「復習の質」が資格試験の合格力を決めます。とくに資格試験のように出題範囲が広い勉強では、“完璧主義”より“繰り返し主義”を意識しましょう。

速読をプラスすれば理解も暗記もスムーズになる理由

資格試験の勉強をする上で、「テキストを速く読むために速読を身に付けたい」と思う人は少なくありません。しかし、「速読で内容を理解できるのか?」という疑問も、同時に生まれてきます。

ここでは、資格試験の勉強に速読を取り入れるための、基本的な考え方をお伝えします。

速読は“読む力”という前提を整える技術

文章を速く読むための第一歩は、「文字をかたまりで捉え、視野を広くし、視点の移動スピードを速くする」という3つのポイントを身に付けることです。

この目の動かし方で文章を読む事ができるようになると、今までよりも楽に、速く、しかも高い集中力で読む事ができます。これによって、読むことが“疲れにくく”なり、勉強の持続力が上がるのです。

速読でよく見かける「頭の中で文章を読み上げないようにする」ということは必要ありません。このような読み方をしようとすると、極端に理解度が落ちてしまうので、資格試験の勉強にはまったく不向きです。

速く読むと理解が浅くなる?

一般的には、読むスピードを上げると理解度は下がります。これは多くの方が実感していると思います。

しかし、「理解度を下げずに読むスピードを上げるトレーニング」を行うことで、この問題は解消できます。「速く読むと理解できない」のは、読むスピードが理解のスピードより速すぎるからです。つまり、脳の処理速度がスピードに追いついていないのです。

そこで、スピードと理解の釣り合いが取れるようなトレーニングが必要になります。と言っても、それほど難しいことではありません。「しっかりと理解できるスピードよりも、ほんの少しだけ速く読む」だけです。

分かりやすく数字でお伝えすると、例えば100というスピードで理解とスピードが釣り合っているとします。そこで、スピードを110に上げると、少しだけ理解するのがきつく感じるようになります。

このスピードで読み込むのです。すると、だんだんと110のスピードに慣れてきて、110でもそれまでの100と同じ理解度で読めるようになります。筋トレとまったく同じとお考え下さい。

さらに、ほんの少しきついぐらいのスピードで読むと、適度な負荷がかかり集中力が高まります。「理解が深いのに時間を忘れる」感覚が生まれるのです。

最初の通し読みや復習読みで“速読”を活かす

速読が最も効果を発揮するのは、最初の「全体をつかむ段階」と、復習の「再確認段階」です。

まずは、内容を理解しようと思わず、全体をざっとテキストを通して読みます。そして、基本的な概念や専門用語などに「馴染み」を付けてから、深く理解するために読み直すのです。

さらに、理解を深めたい箇所はゆっくり、すでに理解している部分では速く読む。この“熟読と速読の使い分け”がポイントになります。

まとめ|理解力を高める3ステップを日常に取り入れよう

「読むこと」は誰にでもできる行為ですが、「理解しながら読む」には仕組みが要ります。

本記事で紹介した3ステップを思い出してください。

  1. 読む前に全体像をつかむ
  2. 読みながら少しずつ復習する
  3. 読んだ後に過去問で定着させる

そして、速読の考え方をプラスすることで、“読むこと”が“学ぶこと”へと進化します。この学び方を続けていけば、どんな難関資格でも「勉強の仕方」そのものが変わります。

次の一歩:「無料動画」で“読む力”を体感しよう

ここまで読んで「もっと速く、楽に、正確に読みたい」と思った方へ。理解力を劇的に変える3つのポイントを、実演で解説した無料動画があります。

『本を速く・楽に読む3つのポイント』

  • 文字を「かたまり」で捉える
  • 視野を広げて、かたまりを大きくする
  • 視点の移動スピードを上げる

読む力が変われば、学びの世界が変わります。あなたの“合格への読む力”を、今すぐ体験してみてください。

勉強の時間が取れない場合はどうするか?

仕事をしている人が資格試験の勉強をする際には、「時間をどのように捻出するか」がとても大きな課題になります。次のページでは、「スキマ時間」をどのように資格試験の勉強に使うかをまとめました。

👉【次のステップへ】勉強時間がない人のためのスキマ時間戦略へ進む

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よくあるご質問(FAQ)

Q:速く読むと理解が浅くなりませんか?

A:最初は理解度が下がる傾向がありますが、フロー理論(難易度と能力の釣り合い)を意識し、語ではなく意味のかたまり(チャンク)で読む練習を重ねると、「熟読のスピード」を上げつつ理解を維持できます。用途は、最初の通し読みと復習段階が最も効果的です。

Q:「効率的な精読法」3ステップの具体的なやり方は?

A:①読む前:目次で構造を把握(全体像)→ ②読む中:1・2・3章、翌日2・3・4章…と前日分を重ねる“復習しながら前進”→ ③読んだ後:過去問で理解を確認し、アウトプット反復で定着。覚えようと力むより、リズムで重ねるのがコツです。

Q:過去問はいつ・どう使うのが最短ですか?

A:途中からすぐ使います。まず解く→わからない問題は解説→テキスト該当箇所で確認→わかった問題に×印で「理解済み」を記録→一通り終えたら最初に戻って反復。自然に弱点に再遭遇し、理解と記憶が同時に深まります。

Q:ノートは作ったほうが良い?それとも不要?

A:合格者は“最小限派”が多いです。見た目の整ったまとめより、過去問(アウトプット)を回す方が定着します。必要なら「1枚1テーマ」のラフなメモに留め、再現性の低い“清書ノート作り”は避けましょう。

Q:1日の学習ルーティン例を教えてください。

A:例:5分 目次で全体像 → 40分 重ね読み(前日分+新章) → 15分 過去問 → 10分 間違い直し&一文要約。忙しい日は「10分重ね読み+10分過去問」の20分版でもOK。重要なのは“毎日回すリズム”です。

著者プロフィール

速読研究会主宰:渡辺篤志

渡辺篤志:「株式会社いろどり」代表 「速読研究会」主宰
100冊以上の速読術・読書術・勉強法を学び、「これなら誰にでも習得できる」という独自のトレーニングメソッドを作り上げ、10年以上に渡り2000名以上に指導。著書に「身につく速読、身につかない速読 ~1冊1時間を目指す、挫折知らずの現実的速読トレーニング~」がある。

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