「読みたい本が沢山あるのに追いつかない・・・」
「仕事で読まなければいけない資料やメールが大量にある・・・」
「時間がかかってしまい、読み終えることができない・・・」
あまりにも変化の激しい時代、いたるところで「継続的な学び」の重要性が説かれています。
「働き方改革」の流れで「生産性を上げなければ」という意識も高まっていますね。
文章をすばやくインプットし効果的なアウトプットにつなげるスキルを身に付けた人とそうでない人とでは、どうしたって差が生まれてしまう。
今このページをお読みのあなたも、恐らく「速読を身に付けてスキルアップをはかりたい」という目的をお持ちだと思います。
でも、こうもお考えなのではないでしょうか?
「そもそも、速読ってホントのところどうなんだろう・・・」
「速読は科学的に不可能だと証明された」とか「速読は嘘」というような記事を読むと、「速読って結局できないのかな」と思われるかもしれません。
その疑問に、できる限り誠実に現実に即してお答えします。少し長くなりますが、速読というものを少しでも理解して頂きたいと思いますので、ぜひお読みください。
速読は可能だが、限界がある
こんにちは。
過去10年に渡って速読や読書術、勉強法などを研究し自ら実践、2000人以上に指導してきた、「やさしい速読術」の渡辺です。
私のこれまでの経験から得た結論は「速読は誰でも習得できるスキルだが、限界がある」ということです。
どういうことか、一つ一つ説明していきますね。
まず、一言で速読といっても、色々なやり方があります。ざっくり大きく分けると以下の3つになり、これらの混合タイプも多いです。
1、「右脳で写真のように情報を取り込み、潜在意識で処理する」というもの(右脳・潜在意識系)
2、「視野を拡大し、一度に多くの文字を見る」というもの(視野拡大系)
3、「必要な情報を効率よくピックアップしながら読む」というもの(飛ばし読み系)
まず、1の「右脳・潜在意識系」速読です。
もしかしたら、あなたもページをパラパラとめくりながら驚異的なスピードで本を読んでいる人の動画などをご覧になったことがあるかもしれません。
「これ、本当に理解できてるの?」と思われたと思います。
そのような速読ができる人がいることは決して否定しませんが、普通の人ができるようになるかというと、「無理」というのが実際に挑戦しトレーニングをしてみた私の結論です。例えて言うならば、まだまだスケートの初心者が全日本大会をいきなり目指すようなものと言えるでしょう。
私もごく簡単な本であれば、うすぼんやり概要をつかむ程度ならできるようになりましたが、これでは到底本を読んだことにはなりません。
人間の潜在意識がとてつもない能力を発揮するということは確かにありますので「無理」と言い切るのは適切ではないかもしれません。しかし、特殊な訓練を長期間しなければならず、当然時間も費用もかかるでしょう。
次に、2の「視野拡大系」速読。
これは比較的簡単に習得できますが、限界があります。
誰でも、本を読む時に3文字~5文字程度のかたまりで文字を認識しています。このかたまりを大きくしていくのです。
少しコツをつかめば、1行を3つぐらいのかたまり(10文字~15文字程度をひとかたまり)で読むことはそれほど難しくありません。
それだけで、今までの読み方よりも確実に速くなります。
問題はその後です。
普通の人では、どんなに頑張っても1行を2つのかたまり(20文字程度)で捉えるのが限界です。
1行を1つのかたまりで読むのは視野の限界を超え過ぎてしまうのです。文字がぼやけてしまい、ほとんど理解することができなくなります。
ただ、これができる人がいることも確かで、私の講座でも3行~4行が一度に「見えてしまう」という方がいました。
本当にそれで理解できているそうなのです。
しかし、極めてまれです。
最後に3の「飛ばし読み系」です。
これは、速読術というよりも読書術と考えればいいと思うのですが、極めて有用な方法です。
年間何百冊という単位で大量に本を読む人は、たいていはその人にとって必要な部分を選択的に読む、ということをしています。
ただ、この読み方をするためには、ある程度その本に対する「前提知識」があることが必要です。
馴染みの深い分野の本であれば必要な個所を選択するのは容易ですが、あまり知らない分野の本だとかなりの読書経験が必要です。どこも重要に思えてしまうので、そもそも重要な部分を選択するということが難しいのです。
いずれにしても、速読というのは魔法のような特別なものではなくある程度は誰でも習得できるスキルなのですが、限界があることもお分かりいただけるでしょうか。
どのぐらいのスピードで読みたいか?
ここであなたに大切な質問があります。
あなたは、どのぐらいのスピードで読みたいですか?
この問いが極めて重要で、それによって速読が身につくか身につかないかが決まると言っても過言ではありません。
野球で考えてみましょう。
野球をする人は、全国で何百万人もいます。その中でプロ野球選手がいるということを否定する人はいませんよね?
もっとレベルを下げて、甲子園大会に出場する選手も何百人もいますよね?
でも、あなたが野球経験者だとして、甲子園出場チームの一員になれるでしょうか?
絶対に無理ではないけど、とても難しいと思います。プロ野球選手は、99%以上の方が「無理」と思うでしょう。
それでは、地域の草野球チームで楽しく野球をすることだったらどうでしょうか?
できれば、そのチームのエースで4番を狙うのは?
これならできると思いませんか?
速読も同じだと私は考えています。
「驚異的なスピード」で読める人がいることはいるが、全員が同じレベルで読めるようになるわけではない。
それでも、「今よりも速いスピード」で読むことはそれほど難しいことではない。
それが速読の現実的なところです。
あなたも、実務で活用できる速読ができれば十分ではありませんか?
甲子園レベルの速読ではなく、草野球を楽しむレベルの速読ができれば良くありませんか?
その先に、もっと上達したいと思ったら、それはその時にもっと練習すればいいのです。
野球を始めて間もない人が甲子園出場校の練習に参加しても、ついていけるはずがありません。
それでは、どれぐらいが「草野球レベルの速読」なのでしょうか。
具体的な読書スピードは?
「草野球のレベルの速読」というのは、ずばり言うとだいたい次のような感じです。
●1行38文字、1ページ15行の本で1ページ10~12秒=200ページの本で30分~45分程度
●1行40文字、1ページ16行の本で1ページ12~15秒=200ページの本で45分~60分程度
これぐらいが、理解度を落とさずに速読できる現実的なスピードであり、少しコツをつかんで練習すれば誰でも到達できるレベルです。
逆にいうと、普通の人ではこれぐらいが限界です。
なぜこれぐらいで限界なのかは、次の項でお伝えします。
なお、本には、いくつかレイアウトのパターンがあります。
1行38文字×15行
1行40文字×16行
1行42文字×17行
1行44文字×18行
に、だいたい分けることができます。
もちろん、すべてがこの通りというわけではありませんが、普通に書店で売られている本はおおむね上記の通りだと思ってください。
そして、1行の文字数と本の難易度にはある程度の相関関係があって、以下のようなイメージを持たれるとわかりやすいと思います。
1、1行38文字×15行=軽い自己啓発エッセイ
2、1行40文字×16行=比較的読みやすいビジネス書
3、1行42文字×17行=やや専門的なビジネス書
4、1行44文字×18行=専門的な学術書
あくまでもイメージですが、なんとなくお分かりいただけると思います。
1と2に関してはそれほど変わらないのですが、3になると速読の難易度がぐっと上がります。あくまでも私の経験則ですが、文字のサイズが小さくなるのと、内容的にも理解に時間がかかるからです。
このレベルの本で速読を身に付けようとするのは、正直なところ結構きついです。まずは1か2のレベルの本で速読を身に付け、そこから少しずつ読む本のレベルを上げていくのが効果的です。
慣れてくれば、1や2ほどではありませんが、3や4の本でもそれなりに速読ができるようになります。
速読の限界について、とても大切なこと。その1
さきほど、
●1行38文字、1ページ15行の本で1ページ10~12秒=200ページの本で30分~45分程度
●1行40文字、1ページ16行の本で1ページ12~15秒=200ページの本で45分~60分程度
が現実的な速読のスピードで、これぐらいが普通の人には限界ということをお伝えしました。
なぜ限界なのでしょうか?
もしあなたがこれまでに速読に関する本を読んだことがあったら、恐らくその本には「心の中で文章を読み上げないようにしましょう」ということが書かれていたと思います。
「黙読」の癖が速読できない理由なのです、ということですね。
実はこのスピードが「黙読」をして読める限界なのです。
このスピードを超えて読もうとすると、「心の中で文章を読み上げないように」しないとできません。「視読」と言って、見るだけで理解する読み方をマスターしないと、これ以上のスピードは極めて困難となります。
逆に言うと、このスピードまでは「黙読」をしても可能です。
速読というと、ほとんどの場合「黙読のクセをなくしましょう」ということが言われていますが、このレベルの速読であれば黙読をしていても十分可能です。
黙読をするとできなくなるのは、1ページを5秒で読むとか1冊を10分で読むとか、そういうレベルの速読の話です。
ここで一つ、考えてみてください。
あなたが速読したい目的はなんでしょうか?
とにかく速く読むことでしょうか?
読書スピードの大会にでることでしょうか?
1冊でも多く読むことでしょうか?
それとも、
本に書かれていることを生活や仕事に活かして、より良い人生を作ることでしょうか?
以下が、私が10年に渡って速読を研究し、実践し、指導してきた結論です。
文章を読んで内容をしっかり理解しようと思ったら、一部の特別な人を除いて黙読は絶対に必要。
しかし、そのレベルの速読で実用的にはまったく問題ない。
それ以上のスピードをひたすら追い求めるよりも、本の内容を血肉にしていくスキルを身に付けることに力を入れるべき。
このことは、声を大にして言わせて頂きます。
すごい速読ができる人は、本当に黙読しなくても読めてしまうので、速読本には当たり前のようにそう書かれているのですが、普通の人には相当にハードルが高いスキルです。
私自身、今でも「黙読しないで理解する」という速読に挑戦していますが、いまだに到達できません。読書術など、私が専門にしている分野で簡単な本であれば、なんとなくその感覚がわかるようになってきた、というレベルです。
いきなりそのレベルの速読を目指しても挫折するのがおちです。「理解している」という感覚がまったく得られず、「自分には速読は無理」となってしまうのです。
速読の限界について、とても大切なこと。その2
速読の限界について、もう一つとても大切なことがあります。
それは、「熟読しても理解できない本は、速読では絶対に無理」ということです。
当たり前すぎるのですが、中にはなんでも速読で可能と思っている人もいるかもしれませんので、明確に否定させて頂きます。
本を読んで内容を理解するうえで、とても大切な概念があります。それは「スキーマ」と言って、大辞林によると「新しい経験をする際に、過去の経験に基づいて作られた心理的な枠組みや認知的な構えの総称」のことです。
分かりやすく言うと、良く知っている分野の本は速く読め、知らない分野の本は遅くなる、ということです。
例えば私であれば、レイアウト構造や文章の難易度がまったく同じレベルの読書術の本と政治の本があったとしたら、間違いなく読書術の本は政治の本の倍以上のスピードで読めるでしょう。
あなたにも、速く読める分野の本、どうしても遅くなる分野の本というのはありませんか?
「読むという行為」と「理解するという現象」の間に「スキーマ」があり、スキーマが少ないと速く読めても理解が追い付かない、ということにどうしてもなるのです。また、スキーマはあっても、文章が難解でじっくり読まなければ理解できない(あるいはじっくり読んでも理解できない)本は、当然速読はできません。
1ページ5秒程度の超高速で文章を読むだけなら私もできます。
でもそのスピードで理解することは到底できません。
もう一度言いますが、できる人がいることは否定しません。
でも、長年速読を教えている私にも無理なのです。
速読の可能性と、その限界についてお分かり頂けましたか?
本には性格があり、それぞれ適した読み方がある
速読に限らず読書全般に関して、もう一つ大切なことがあるので、それも併せて書かせて頂きます。
私が知る限りどの読書術の本を読んでも書かれていないのですが、「本の性格」というものです。
本の性格といっても分かりにくいと思うので、具体的に書きますね。
私は、本には大きく分けて3つの性格があると考えています。あくまで私独自の分類なのですが、
1、自分の核を作ってくれる本
2、専門性を高めるための本
3、ノウハウ・スキルを磨くための本
1の本は、自己啓発書や人生哲学、経営者やアスリート・芸能人などの自伝、中国古典など、「生き方」や「考え方」を提示してくれる本です。また、私たちはみな社会・環境の中の存在ですので、政治や経済、宗教、自然科学、医学、福祉、芸術などの一般教養なども入ってくるでしょう。
2の本は、専門分野によって当然異なります。
プログラマーであれば最先端のプログラミング技術かもしれませんし、介護職であればより効果のある認知症高齢者への対応の仕方かもしれません。
3の本は、専門分野を効果的に発揮するための様々なスキルに関する本。
コミュニケーションや時間管理、文章術、読書術、マーケティングなど、いわゆるビジネスノウハウ全般です。人間関係や整理術など生活ノウハウも含まれます。
実は、これらの本の性格によって、適した読み方があるのです。
1、自分の核を作る
読みやすい本であれば、軽い速読で全文を通して読み、文章の裏にある著者の考えをダイレクトに吸収するように読む。難解な本であれば、しっかりかみしめるように熟読する。
2、専門性を高める
すでに知っている部分は読み飛ばす、あるいは軽く確認程度に速読して、初めて知る部分は熟読する。
3、ノウハウ・スキルを磨く
自分にとって大事なポイントとそうでないところ、実践したいこととそうでないことなどのメリハリを付けて読む。
もちろん、すべての本がこのパターンに当てはまるわけではありませんが、なんとなくお分かり頂けますか?
本によって、読み方を変えるのです。
もっと具体的なノウハウはあるのですが、細かくなりすぎるのでだいたいのイメージをつかんで頂ければと思います。
速読を身に付けると熟読のスピードが上がる
こうした読み方の中で、結構「熟読」が多いことに気が付きませんか?
先ほどの「速読の限界」とも関連するのですが、熟読しないと理解できない本や文章はどうしてもあるのです。
ですので、必要に応じて速読と熟読を使い分けることが大切。
ただ、恐らく、あなたが頑張って速く読むよりも、私が熟読するスピードの方が速いかもしれません。1分間の読書文字数で言うと、普通の人はだいたい500~600文字なのですが、私は1000文字以上でも十分熟読できます。
実は、速読を身に付けることで、熟読のスピードが上がっていくのです。
そして、この「高速熟読」のスキルがとても有用。
仕事上の大切な文書やメールなど、絶対に読み間違えてはいけないものは、当たり前ですが熟読が基本です。そのスピードが速いか遅いかは、仕事をする上で極めて大きな差になりますよね。
速読に関して、ここまでのまとめ
これまで書いてきたことをもう一度まとめます。
1、速読は誰にでも習得できるスキルだが、限界がある。
2、その限界は、
1行38文字、1ページ15行の本で1ページ10~12秒=200ページの本で30分~45分程度
1行40文字、1ページ16行の本で1ページ12~15秒=200ページの本で45分~60分程度である。
3、なぜ限界があるかというと、黙読して読めるのがこれぐらいだから。
4、普通の人には、黙読をしないで文章を理解するのは極めて困難
5、1行42文字を超える本になると、速読の最初のトレーニングには不向き。1行38文字~40文字で速読に慣れてきてから本のレベルを上げていく。
6、熟読してもわからない文章は速読できるはずがない。
7、本によって、熟読、軽い速読、速読、メリハリ読みを使い分ける。
速読に関して本当に様々な情報がありますが、ある程度整理できましたか?
このレベルの速読でいいから身に付けたいという方は、ぜひ「やさしい速読術」についてのページをお読みください。