速読は特殊な能力ではなく、少しトレーニングすることで誰でも身に付けることができる、単純な「スキル」です。しかし、速読のトレーニングというと、どうしても「右脳が働き」とか、「目の動かし方」という方向に話が行きがちで、途端に難しいものになってしまいます。

ここでは、これまで10年間に渡り、速読や読書術、勉強法を研究し自ら実践、結果を出してきた速読のトレーニング方法をお伝えします。

このトレーニング方法は、特別な教材など一切不要で、普段の読書で自然に取り入れることができ、誰にでも実現可能なものですので、ぜひ今日から取り組んでみてください。

まず、一般的に思われている速読トレーニング方法の「誤解と真実」についてお伝えしたいと思います。

速読トレーニングの誤解と真実・1:目を高速で動かす

「速読のトレーニング」ときいて、まず多くの方がイメージするのが「目を高速で動かす練習」ではないでしょうか。ページの上下に黒い丸がたくさん並んでいて、それを目で追っていくようなトレーニングや、視点を八の字に動かしたり、一点を凝視したり、とにかく「目の移動を速くする」ことを主眼としたトレーニングがあります。

実は、私も10年以上前、速読講座を始めたころは、このようなトレーニングをしていました。もちろん効果があると思って、です。

しかし、その後も色々と実践を積む中で、このような「眼球トレーニング」は、ほとんど意味がないことが分かりました。なぜなら、「目を速く動かすことができる」ということと、「文章を読んで理解する」というのは、まったく次元の違う話しだからです。

目を高速で動かして文章を読もうとすると、途端に内容の理解ができなくなるのです。

理由は簡単で、文章を理解するために一番最初に絶対しなければいけない「文字を見る」という行為が、とても雑になってしまうからです。

目を動かすスピードが速くなればなるほど、「文字を見る」という基本的なことがおろそかになり、どんどん理解度は落ちていきます。

それでは、このような眼球トレーニングがまったく意味がないか、というと、そうでもありません。目を高速で動かすトレーニングを行うことで、確かに目を速く動かすことはできるようになりますし、読むのが楽にはなるのです。

ですので、私はこう考えています。

「目を動かすトレーニングは、あくまでも準備運動」

野球で例えると分かりやすいと思いますが、野球をする時に「足が速い」「体力がある」というのは有利に働きます。だから、走り込みを行うわけです。

でも、どんなに走り込みを行い、体力がついて足が速くなっても、野球は上手くなりません。野球がうまくなりたければ、ボールを投げたりバットを振ったり、「野球の練習」が必要なのです。

本を読むのも同じです。

眼球トレーニングは、あくまでも速読トレーニングを行う上での「走り込み」です。本当に必要なのは、速く読んで、かつしっかりと理解するためのトレーニングです。

そのために、ひたすら「目を高速で動かす」トレーニングを行うのではなく、速読の3つのポイントを押さえた上で、速く読んでいくトレーニングをする必要があるのです。

速読の3つのポイントというのは、次の3つです。

  1. 視点を留めて、文字をかたまりで捉える
  2. 文字のかたまりを大きくして、一度に見る文字の量を増やす
  3. 視点の移動スピードを速くする

こちらの記事で詳しくお伝えしていますので、こちらも参照してください。

速読トレーニングの誤解と真実・2:頭の中で文章を読み上げないようにする

これも、速読トレーニングを語る上でとても多く考えられていることです。文章を読むときに「頭の中で読み上げないようにする」。つまり、「黙読をしないようにする」ということです。

ほとんどの速読本、あるいは速読を解説しているWebサイトで当たり前のように書かれているのですが、これも、意識し過ぎると、内容の理解度が極端に悪くなります。

私たちが言語を身に付ける時、まず最初は「音」を認識することから始まります。お父さんやお母さんが話しているのを聞いて、私たちも話したり聞いたりすることができるようになり、そこから文字を学ぶわけです。

だから、大多数の人は、まず間違いなく本を読む時に「黙読」をしていると思います。恐らく、意識すらしていないほどに当たり前に黙読をしているのです。

そのような、幼少期から体に染みついた言語処理の能力を使わず、「頭の中で黙読しないで読みましょう」と言われても、簡単にできるはずがありません。「黙読をしないようにする」ということを意識すると、とたんに理解度が極端に落ちてしまいます。

「速読に挑戦したけど、挫折した。身に付かなかった」という方がとても多いのですが、それはおそらく、「黙読をしないで、文字を見るだけで理解する」という読み方に挑戦するからだと思います。

黙読をしないで、とてつもないスピードで読むことができる人がいる、ということは否定しませんし、絶対に不可能ではないと思いますが、「そこまで速くする必要が、本当にありますか?」という疑問も生まれてきます。

私は、黙読をしっかりして本を読んでいますが、200ページ程度の読みやすい本であれば、1時間ぐらいで読み終えることができるぐらいのスピードです。これぐらいの速読ができれば、十分ではないでしょうか?

まずは、「黙読をしない」という速読トレーニングではなく、「黙読して理解できるスピードを速くする」という速読トレーニングを行えばいいのです。

速読トレーニングの誤解と真実・3:右脳を活用して、イメージで本を読む

一時期、まさに一世を風靡したタイプの速読術です。ページをパラパラとめくるだけで、潜在意識が本に書かれている情報を処理し、必要な時にその情報が顕在意識に出てきて活用できるようになる、という類のものです。

実は私も、速読に関心を持ち始めたきっかけは、この手の速読術でした。「もっとたくさん本を読んで情報を仕入れたい」と思って、2日間で10万円以上する速読スクールに参加したのです。

結論を言うと、「パラパラとめくるだけでは、さっぱり本の内容は理解できない」という、至極当たり前のことでした。インストラクターの先生に、「ぜんぜん頭に入っている感じがしないんですけど…」と質問しても、「大丈夫です。あなたの潜在意識はしっかり記憶しています」と言われるんですね。「でも、まったく理解できている気がしなくて、潜在意識は分かっていると言われても困るんですけど…」という話です。

私も、人間の潜在意識がとてつもない能力を持っているとは思いますし、このような読み方で読める人がいるということを否定するものではありませんが、ごく一般的な私たちが目指すのは、極めて難しいと言わざるを得ません。

誰でも実現できる、現実的な速読トレーニング

ここまで、速読トレーニングの誤解と真実ということで、3つ挙げてきました。

  1. 目を高速で動かす
  2. 頭の中で文章を読み上げないようにする
  3. 右脳を活用して、イメージで本を読む

というトレーニングの方法が、現在「速読」を語る時によく使われています。しかし、すでに述べた通り、これらのトレーニング方法だと、読むスピードが速くなるほど、理解度は下がっていきます。

だから、どうしても「速読に挑戦したけど、挫折した」という方が多いのです。

ここで、誰にでも、特別な教材やアプリなどは不要で、日常の読書を通して、自然に速読が身に付くトレーニング方法をお伝えします。

必要な教材は、あなたが読みたい本だけ。できれば、下記の条件を参考に、3冊ほどご用意ください。

  • 読みやすくて内容が簡単なもの
  • 1行の文字数が38文字~40文字以下のもの
  • 1ページ辺り、15行~16行程度のもの
  • 適度な改行があるもの(改行が多すぎるものは避けて下さい)
  • イラストや写真、図表などが少ないもの
  • 1章あたり、15ページ~30ページ程度のもの(見開きで1つのテーマのようなものは避けて下さい)
  • あまり専門的ではなく、一般的な内容のもの

200ページから220ページ程度の軽い自己啓発書のようなものが、速読のトレーニングには最適です。

それでは、速読のトレーニングを日常的に、簡単に行う方法をお伝えしていきます。

まず、「速読の3つのポイント」を押さえて下さい。速読の3つのポイントとは、以下の通りです。

  1. 視点を留めて、文字をかたまりで捉える
  2. 文字のかたまりを大きくして、一度に見る文字の量を増やす
  3. 視点の移動スピードを速くする

こちらの記事で詳しくお伝えしていますので、こちらも参照してください。

分かりやすく動画で解説もしているので、こちらからご登録頂き、確認してください。

さて、文字をかたまりでとらえる感覚がつかめ、そのかたまりを大きくすることができるようになったら、最後にスピードを速くしていきます。

この時に大切なのが、自分が理解できるスピードを少し超えたスピードで読み込むこと。

どんな技術でもスポーツでも、トレーニングのキモは「自分の限界を少し超えたところで繰り返し行う」ことです。速読もまったく同じで、理解の限界を少し超えたスピードで読み込むことによって、理解できるスピードがどんどん上がっていくのです。

「自分が理解できるスピードを少し超えたスピード」というのは、完全に理解できている状態の7割程度の理解度だとお考え下さい。どんなことが書いてあるのかはだいたい分かるけど、細かい所まで突っ込まれると正確には答えられない、という程度の理解度です。

しかし、このスピードで読むと理解度が下がったままですよね?

そこで、スピードを速めていきつつ、理解度も深めるための「速読トレーニングメニュー」を用意しました。ぜひ、この速読トレーニングを試してみてください。

1、下読み

まず、先ほど挙げたような比較的簡単で読みやすい本を用意してください。

1章20~25ページぐらいがいいでしょう。

第1章を、「速読の3つのポイント」を意識して、自分の理解できるスピードを超えたスピードで一気に読みます。この時、文章がしっかり読めてしまうと遅すぎ、まったく分からないのでは速すぎます。かろうじて意味が取れる程度のスピードで読んでください。

1ページを10秒~12秒、25ページを4分~5分ぐらいのスピード感です。

100メートルを全力ダッシュするような感覚で読むことになるため、5分でもかなりの疲れがあります。しかし、それこそが脳に適度な負荷をかけている証拠。1日5分の全力ダッシュ読みでどんどん脳が鍛えられていきます。

2、本番読み

次に、下読みをした第1章を丁寧に読みます。3つのポイントを意識したまま、視点の移動スピードを遅くし、しっかり理解できるスピードで、内容の理解を第一に考えます。

3、仕上げ読み

もう一度第1章の最初に戻り、下読みと同じぐらいか、それ以上のスピードで読みます。2の本番読みで内容を理解しているので、かなりの高速で読んでも意味が取れると思います。

この「仕上げ読み」をすることで、「速く読んでも内容が頭に入ってくる」という感覚を、体で覚えることができます。

速読はスポーツと同じ、ということを先ほども書きましたが、ある技術を身に付けるためには、うまくできている状態を体に覚え込ませる必要があるのです。内容が分かっている文章を、繰り返し、スピードを速くしていきながら読む事で、「速読感覚」を身に付ける事ができるようになります。

この、1~3のトレーニングを1日1章やってみてください。所要時間は20分~30分程度です。とても単純で簡単ですが、効果は抜群にあります。この速読トレーニングを3冊やる頃には、読むスピードは確実に上がっているはずです。

しかも、単調な眼球トレーニングではなく、読みたい本を読むことで読書スピードが自然に上がっていくので、挫折することもありません。

速読トレーニングはスポーツと同じ

速読は、特殊な能力と誤解されがちですが、そんなことはありません。スポーツと同じように、トレーニングをすることで必ず習得できる単純な「スキル」です。

頭で理解し覚えるというよりも、「体得する」というイメージの方が近いかもしれません。身体で覚えるスキルなので、一度身に付ければ忘れません。

速読3つのポイントは、文字だけだとどうしてもわかりづらいので動画で解説しています。さらに詳しく、無料の動画講座でお伝えしています。

また、読みたい本を読めば読むほど、自然に読書スピードが上がり、理解度も深まる「実践的読書術5つのステップ」では、今回お伝えしたトレーニング方法をさらに深堀りしてお伝えしている、約1時間のWEBセミナーです。参加費用は100円となっていますので、ぜひこの機会にご視聴下さい。