速読になぜ「視野拡大」が必要なのか?
「かたまり読み」ができるようになってきたとしても、視野そのものが狭いままだと、1回の視線移動で捉えられる情報量は限られてしまいます。たとえば、1ページの中で数行ずつ“まとめて見よう”としても、視界に入る範囲が狭ければスムーズに読み進めることができません。
視野を広げることで、以下のような変化が起こります。
- 1回の視線移動で捉えられる文字・行の数が増える
- ページ全体を俯瞰できるようになり、読みの流れが見える
- 視線の無駄な動きが減って集中力が長続きする
特に縦書きの本や新聞では「上下方向の視野」が、横書きのビジネス文書やネット記事では「左右方向の視野」がそれぞれ重要になってきます。どちらも意識して鍛えていくことで、速読力が飛躍的に向上します。
速読における「視野」とは?
ここでいう視野とは、日常生活での視野ではなく、読書中に無理なく同時に視認できる範囲のことを指します。
視野が狭いと、1行の中でも頻繁に視線を動かす必要が生じ、読みのテンポが乱れてしまいます。また、歩くときに「歩幅が小さい」と速く歩くのが難しいように、視野が狭い(文字をとらえるかたまりが小さい)と読むスピードにはどうしても限界があるのです。
逆に視野が広がると、1視線で捉えられる情報が増え、「かたまり読み」の安定感が大きく向上します。歩くときに試して頂きたいのですが、小股で歩いていてスピードを上げようとすると、「歩幅が詰まって」歩きにくく、自然に大股になると思います。速読も同じようなものだとお考え下さい。
ステップ別トレーニング方法
まずは自分の視野がどの程度か、簡単にチェックしてみましょう。
- 書籍や印刷物を用意し、行の真ん中に視点を置きます。
- 視点を動かさずに、その上下(縦書き)/左右(横書き)の文字や行がどこまで見えているかを確認します。
- 「はっきり読める」のはどの辺までか、「なんとなく見える」のはどの辺までかを分けて観察するのがコツです。
この確認により、今の視野の限界と伸びしろが見えてきます。
視野を広げるには、目の筋肉を柔らかくする視覚トレーニングが効果的です。
トレーニング①:視点固定+周辺視認
- 行の真ん中に視点を置いたまま、頭の中でその行の文字を追っていき文章を読んでみます。スピードは意識する必要はありません。ゆっくり一文字ずつ見ていきましょう。
- 視線は動かさず、目の“広がり”で文字を「見る」練習です。
- 最初は、視点を置いているところのすぐ上下(左右)しか読めないと思いますが、上下(左右)の端を意識して見ていると、少しずつ読める範囲が広がっていきます。
- ただし、一般的な人では、1行全部を視点を動かさず読むことはなかなかできませんので、「読めなくて当たり前」という気持ちで取り組んでください。
トレーニング②:複数行スキャン
- ある程度1行でトレーニングしたら、今度は2行同時に行ってみましょう。やることはトレーニング①と同じです。視点を2行の中央に置いたまま、頭の中だけで一文字ずつ文章を読み上げていきます。
- 同様に、縦書き・横書きともに、どんどん行数を増やしてみましょう。
- 複数行見ていくときは、行と行の間の空白の部分に視点を置くことがポイントです。行の上(文字の上)に視点を置くと、その行に意識が集中してしまい、他の行が見えづらくなります。
- 最終的には、ページの中央に視点を置いたまま、視点は動かさず、頭の中で文章を読んでみましょう。
いずれも、しっかり読めなくても全然問題ありません。「視野を意識的に広げて眺める」練習として行ってください
※最初は、小学生向けの本など、文字が大きくて1行あたりの文字数が少ないものでトレーニングするのが効果的です。
よくあるつまずきと対策
「視野が狭くて読み飛ばしてしまう」
→ 最初は“読めなくても見えるだけでOK”。視野トレは見る力のストレッチです。
「目が疲れる/ぼやける」
→ 無理は禁物。1回5分程度、目を休ませながら継続することで、少しずつ拡がります。
「上下/左右の感覚が混乱する」
→ 書籍とデジタルで向きが異なるのは当然。読む場面ごとに適した視野を切り替える意識を持ちましょう。
視野が広がるとどう変わる?
- 上下/左右に視線を動かす回数が減り、テンポが安定する
- かたまり読みとの相乗効果で、読書スピードが一気に上がる
- 読む前に「全体の流れ」が把握でき、読み直しが減る
- 集中力が持続しやすく、読書体験が快適になる
読書だけでなく、プレゼン資料や長文のメール、ネット上の記事でも、視野が広がると情報の受け取り方が変わります。
次のステップ:視点の移動スピードを速くするトレーニング
「かたまり読み」+「視野拡大」によって、読みの土台がしっかり整ってきました。次は、この目の動かし方をベースに、「視点の移動スピードを速くするトレーニング」に移りましょう
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よくあるご質問(FAQ)
A. はい、読み方に応じて上下方向・左右方向のトレーニングを使い分けることが大切です。
縦書きの書籍や新聞を読むときは、上下方向の視野を意識して練習を行います。一方、横書きのビジネス文書やネット記事では、左右方向に目を広げて読む感覚を育てる必要があります。ただし、基本的な考えはまったく同じです。
A. 視野が狭いと視線移動の回数が増え、読みのテンポが乱れてしまいます。
視野が狭いと、1行や1段落を何度も細かく目で追う必要があり、集中力が途切れやすく、読書のリズムが崩れやすくなります。速読においては、1回の視線移動でより多くの文字をとらえることが求められるため、「かたまり読み」と「視野拡大」はセットで鍛えることが理想的です。
A. 個人差はありますが、毎日5分のトレーニングを1~2週間続けると変化を感じる人が多いです。
視野を広げるトレーニングは、筋トレやストレッチに似た効果があり、急激に広がるものではありません。ただし、毎日少しずつ「視る意識」を鍛えることで、1~2週間程度で文字の見え方や集中力の変化を実感できるようになります。特に「読めなくても見えていればOK」という気持ちで継続することがコツです。