速読力を高めるには、視野の広がりだけでなく「視点の移動スピード」が重要です。本記事では、読むリズムを整えるための3ステップトレーニング(読みやすい本の選び方、メトロノームを使った視点移動練習、分割数を減らす応用法)を詳しく解説。次のステップ「内音声化」への橋渡しとして、速読の基盤を整えます。

速読トレーニングにおける「視点の移動スピード」の重要性

速読トレーニングに取り組む中で、視野を広げることで「一度に見える情報量」が増えてきたら、次に大切なのは視点の移動スピードを高めることです。

たとえ視野が広がっても、視線の移動に時間がかかっていては読書スピードは伸びません。目の動きがぎこちないと、読み戻しが増えたり、集中力が切れたりしてしまう原因にもなります。

速読では、文字を広い範囲でとらえる力と同時に、「その視野をスムーズに、素早く動かせる力」が不可欠です。本記事では、目の動きを効率よく鍛えるための視点移動スピード向上トレーニングを、3ステップでわかりやすくご紹介します。

速読に必要な眼球運動とは?

文章を読むとき、視点はスムーズに移動しているように見えて、実際には「ピッ、ピッ、ピッ」と跳ねるように動いています。これはサッカード(跳躍性眼球運動)と呼ばれ、視線が瞬時に移動する際の目の動きです。意識しなくても、だいたい2文字~5文字程度のかたまりで、小刻みに視点が動いています。

また、視点を止めて意味を理解するフィキセーション(視点固定)も速読に欠かせません。この「移動(サッカード)」と「停止(フィキセーション)」をリズムよく繰り返すことが、読書スピードと理解力を両立させる鍵となります。

速読トレーニングでは、このリズム感を身体に覚えさせることが大切です。

速読というと「目を高速で動かすトレーニング」をイメージされる方も多いと思いますが、この「移動(サッカード)」と「停止(フィキセーション)」を意識しないで「目を速く動かすことだけ」を考えてしまうと、文字の上を視点が滑ってしまい、まったく理解できなくなってしまいます。

視点移動スピードを高める速読トレーニング3ステップ

STEP1
読みやすい本を用意して、目の動きに集中する

最初に選ぶ本は、内容を深く考えずに“スッと読める”ものが理想です。自己啓発エッセイや、好きなアーティスト・スポーツ選手の自伝など、興味があり読みやすいジャンルがおすすめです。

以下の条件を目安にしましょう:

  • 1行あたり40文字以内(できれば38文字程度)
  • フォントが小さすぎず、視認性が良い
  • 内容が難解すぎず、視線を動かすことに集中できる

「読むための本」ではなく、「目を動かすための本」を選ぶ感覚がポイントです。

STEP2
メトロノームで視点移動にリズムをつける

スマートフォンの無料メトロノームアプリを活用し、「カチカチ」というリズムに合わせて視点を動かす練習をします。ここでは文章を理解する必要はありません。目的は、目の動きを訓練することです。

手順は以下の通りです:

  • 読書用の1行を4分割にイメージする
  • メトロノームのテンポに合わせて「1→2→3→4」と視点を動かす
  • 慣れてきたらテンポを少しずつ上げていく

視点を規則正しく動かすことで、目の筋肉が鍛えられ、速読に適した視線リズムが身につきます。

STEP3
視野を広げながら1行の分割数を減らす

次に行うのは、広がった視野を活かして、1行を少ない視点移動で読み取る練習です。

  • 最初はメトロノームのテンポを落とし、1行を3分割で練習
  • 慣れてきたら、1行を2分割で読む
  • 各ステップでテンポを徐々に上げ、視点移動のスピードと安定感を育てていきます

この段階では「視野の広がり」×「目の運動スピード」×「リズム」の3要素を融合させることが、速読力の強化に直結します。

よくあるつまずきとその対処法

視点が滑って文字が読めない

→ 視点を留める位置のそばに指やペン先を置いて、指やペンをメトロノームのテンポに合わせてリズミカルに動かすことで視点が安定します。

スピードを上げると理解できなくなる

→ このトレーニングは、あくまでも「リズミカルに、速く視点を動かす」ために行うものですので、理解できる必要はありません。スピードと理解を両立させるには、次のステップの「内音声化を速くするトレーニング」が必要です。

目が疲れる、ぼやける

→ トレーニングは1日5分程度に抑え、まばたきや遠くを見るなどの目のケアを忘れずに。別のページで「目の疲れを取るためのストレッチ」をお伝えします。

継続のコツと習慣化の工夫

  • 本を読む前の“ウォーミングアップ”として取り入れると効果的
  • 1分でもいいから毎日続ける

日々の小さな積み重ねが、速読力を確かなものにしてくれます。

次は「内音声化のスピードアップ」へ

視野を広げ、視点移動を速くする速読トレーニングを積み重ねることで、「見る力」は確実に高まりました。しかし、それだけでは理解力が追い付かず、「読書スピードが上がった」ということにはなりません。

次のステップは、「内音声化(頭の中での音読)」のスピードです。視線が速くても、頭の中で読むスピードが遅ければ、読書全体のテンポは上がりません。

内音声を“無くす”のではなく、“味方につけて活用する”ことで、理解力とスピードの両立が可能になります。次回は、内音声を自在に操るトレーニングへと進みましょう。

▶ 次のページ:「内音声化のスピードを速くするトレーニング」へ進む

よくあるご質問(FAQ)

Q. 速読のために「視点の移動スピード」を鍛えると、どんな効果がありますか?

A. 視点の移動スピードを鍛えることで、視線の動きがスムーズになり、読み戻しや集中力の乱れが減少します。
広がった視野と組み合わせることで、1行をより少ない視点移動で読めるようになり、速読のテンポが自然と安定します。結果的に、読書の「疲れにくさ」や「内容の俯瞰力」も向上します。

Q. 速読トレーニングにメトロノームを使う理由は何ですか?

A. 視点の移動に「一定のリズム」を持たせるためです。
メトロノームのテンポに合わせて目を動かすことで、サッカード(跳躍性眼球運動)の速度と規則性が安定し、視線が滑ったり戻ったりすることが減ります。理解よりもまず「目の動きの訓練」に集中できるのが特長です。

Q. 速く視点を動かすと、内容を理解できなくなるのは普通ですか?

A. はい、最初は誰でもそうなります。
視点移動のスピードを上げるトレーニングは「目の運動」が目的なので、理解力の低下は一時的なものです。本格的に「速く読んで理解する」には、次のステップである「内音声化(頭の中の音読)」のスピード調整が必要になります。

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