なぜ専門書・難しい本は「普通に読んでも」理解できないのか?
「最後まで読んだのに、何が書いてあったのか説明できない」
「時間をかけて読んだのに、結局仕事や勉強に活かせていない」
「途中で分からなくなり、何度も挫折している」
多くの人は、学校や社会で「本の正しい読み方」を体系的に教わることがないまま大人になります。その結果、小説もビジネス書も専門書も、すべて同じ読み方で読もうとしてしまうのです。
しかし実際には、専門書や難解な本ほど、特殊な読み方が必要です。そして、その読み方を知らないまま努力を続けると、「自分は向いていないのではないか」という誤った自己評価に行き着いてしまいます。問題は能力ではなく、読み方の設計ミスなのです。
専門書や学術書、資格試験の参考書は、そもそも「最初から順番に、すべてを理解しながら読む」ことを想定して書かれていません。
多くの場合、著者は次のような前提を置いているのではないかと考えられます。初心者向けの入門書と違い、
- 読者はある程度の基礎知識を持っている
- 必要な部分を取捨選択して読む
- 全体構造を理解した上で、関心のある箇所を深く読む
ところが、私たち読者は真面目であるがゆえに、「最初の1ページから丁寧に理解しないといけない」「分からない言葉はすべて調べないといけない」と思い込みがちです。
その結果、
- 一文ごとに立ち止まり、全体像を見失う
- 読了しても要点がつかめない
- 疲労だけが残り、達成感がない
という状態に陥ります。
これは、専門書を読む上で非常によく起こる一般的なつまずき方です。だからこそ、専門書には「専門書に適した読み方」が必要なのです。
専門書攻略の基本技術①
SQ3R読書法を「使える形」で理解する
専門書や難解な本を読むとき、多くの人は「とにかく理解しなければ」と力んでしまいます。しかし、専門書において本当に重要なのは、最初から深く理解しようとしないことです。
そこで役に立つのが、SQ3R読書法です。SQ3Rは、次の5つの工程から成ります。
- Survey(全体を見渡す)
- Question(問いを立てる)
- Read(読む)
- Recite(言い換える)
- Review(振り返る)
ただし、ここで注意したいのは、SQ3Rを「順番通りにこなす手順」として理解しないことです。重要なのは、それぞれの工程が「何のために存在しているか」を理解することです。
まず Survey は、「読む前の準備」です。目次・見出し・図表・太字部分をざっと眺め、「この本は何について、どんな構造で書かれているのか」をつかみます。これは内容理解のためではありません。全部を読まなくても済むようにするための工程です。
次の Question は、読書の質を大きく左右します。「この章で著者は何を言いたいのか?」「自分は何を知りたくてこの本を読んでいるのか?」こうした問いを先に立てることで、読む行為が受動的な作業から、答えを探す探索行動に変わります。
Read は、その問いに対する材料を集める工程です。一文一文を完璧に理解しようとする必要はありません。「問いに関係ありそうな部分」を拾い集める意識で十分です。
Recite は、暗記のためではありません。ここで行うのは、「自分の言葉で説明できるかどうか」の確認です。誰かに説明するつもりで、要点を短く言い換えてみる。これができない部分は、理解があいまいな箇所です。
最後の Review は、復習というより「再接続」です。時間を置いてもう一度全体を眺め、この本の内容が「自分の仕事・学び・関心」とどうつながるかを考えます。
SQ3Rは、専門書を「全部読むもの」から「必要な情報を引き出すもの」へ変える技術です。この発想の転換だけでも、専門書への心理的ハードルは大きく下がります。
専門書攻略の基本技術②
クリティカルリーディングで「考えながら読む」
もう一つ、専門書読解で欠かせないのがクリティカルリーディングです。「クリティカル」という言葉から、「批判する」「否定的に読む」という印象を持つ人も多いかもしれません。しかし、ここでいうクリティカルとは、感情的に疑うことではなく、構造的に理解することを意味します。
クリティカルリーディングの基本は、次の3点です。
- 著者は何を主張しているのか
- その主張の根拠は何か
- どんな前提・立場から書かれているのか
この視点を持つと、専門書の読み方が大きく変わります。
たとえば、分からない専門用語が出てきたとき。これまでなら「分からない=止まる」だったかもしれません。しかしクリティカルリーディングでは、「この言葉が分からなくても、主張の流れは追えるか?」「今は定義を深掘りすべき場面か?」と一段高い視点で考えることができます。
専門書を読む際に重要なのは、細部の完全理解よりも、全体構造の把握です。主張と根拠の関係が見えていれば、細かい部分は後から何度でも補えます。
また、クリティカルリーディングは「正解を探す読み方」でもありません。著者の考えを一度そのまま受け取り、「自分はどう考えるか」「どこに違和感があるか」を整理するための読み方です。
この姿勢を持つことで、専門書は「覚える対象」ではなく、思考を深めるための対話相手になります。
SQ3Rとクリティカルリーディングを組み合わせる意味
SQ3Rは「読む流れ」を整える技術、クリティカルリーディングは「考える視点」を与える技術です。どちらか一方だけでは不十分です。SQ3Rだけだと、手順をこなす作業になりがちです。クリティカルリーディングだけだと、考える負荷が高くなります。
両者を組み合わせることで、専門書は初めて「理解できる」「使える」ものになります。
そして、多くの人がここで次の壁に気づきます。理解できるようになった。でも、まだ行動は変わっていない。この先に必要になるのが、理解を行動につなげるための読書の再設計です。
実は、読書には複数の壁があります。
- 本を開けない「入口の壁」
- 理解できない「理解の壁」
- 覚えられない「記憶の壁」
- 行動できない「行動の壁」
このページで扱ってきたのは、主に「理解の壁」です。
しかし、理解を超えて行動・習慣・人生設計につなげるには、さらに一段階上の設計が必要になります。
読書を「一生使える武器」に変えるために、次のステップへ
もしあなたが、
- もう一度、学び直したい
- 読書を人生や仕事に活かしたい
- 努力が積み上がる実感を取り戻したい
そう感じているなら、次に必要なのは「読書の再設計」です。読む技術を点で終わらせず、人生全体の中でどう使うかまで設計する。
そのための無料講座が「7つの壁から学ぶ読書再設計」です。
読むだけの読書から人生を動かす読書へ。あなたの学びが、きちんと未来につながるように、ぜひ「7つの壁から学ぶ読書再設計」をご利用ください。
AI時代の読書術:ChatGPTで「要約・記録・行動」を一気につなぐ方法
ここまでで、難しい本や専門書を「理解できる形で読む技術」は身についたはずです。しかし、難しい本や専門書を本当に自分事として落とし込むのは、なかなか大変な作業です。
そこで力を発揮するのが、ChatGPTなどの生成AIを活用したAI時代の読書術です。ChatGPTは、読書の代わりをする存在ではありません。要約を作り、メモを整理し、行動計画や問いを生成することで、読書後にやるべき思考と作業を一気に肩代わりしてくれるパートナーです。
AIを使えば、「読んだあと何をすればいいか分からない」「記録が散らかって終わる」といった悩みは激減します。次のページでは、AIを使って要約・記録・行動化を自動化する具体的な方法を、実践例とともに解説します。読書を“知識”で終わらせず、“行動が生まれる仕組み”に変えたい方は、ぜひ続けてご覧ください。
👉【次のステップへ】 AI時代の読書術:ChatGPTを使った“要約・記録・行動化”メソッ(準備中)
よくあるご質問(FAQ)
A:いいえ。専門書は最初から最後まで順番に読む前提で書かれていません。全体構造を把握し、目的に合った箇所を重点的に読む方が、理解と活用の精度は高まります。
A:はい。SQ3Rは、全体把握・問いの設定・振り返りを重視するため、専門書や学術書のような情報密度の高い本と非常に相性が良い読書法です。
A:いいえ。クリティカルリーディングとは、著者の主張・根拠・前提を意識して構造的に理解する読み方であり、否定や批判を目的とするものではありません。
A:いいえ。多くの場合、能力の問題ではなく「読み方」が合っていないだけです。専門書には専門書に適した読み方があり、それを知ることで理解度は大きく変わります。
A:読書には「理解」「記憶」「行動」など複数の壁があります。理解できただけでは不十分で、行動までつなげるためには、読書全体を再設計する視点が必要です。
著者プロフィール

渡辺篤志:「株式会社いろどり」代表 「速読研究会」主宰
100冊以上の速読術・読書術・勉強法を学び、「これなら誰にでも習得できる」という独自のトレーニングメソッドを作り上げ、10年以上に渡り2000名以上に指導。著書に「身につく速読、身につかない速読 ~1冊1時間を目指す、挫折知らずの現実的速読トレーニング~」がある。
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