なぜノート作りでは記憶が定着しないのか:勉強している「つもり」の正体
資格の勉強を始めると、多くの人が「まずはノートにまとめよう」と考えます。重要なところを抜き出して、ページをきれいに整理し、色分けして、丁寧に書き込んでいく。その作業は、確かに「勉強している感覚」を強く与えてくれます。
ですが、その作業を続けながら、あなたはどこかで薄々気づいているのではないでしょうか。
「このノート…本当に頭に入ってる?」
実は、多くの資格受験生を苦しめているのが、この「覚えたつもり」という錯覚です。心理学では「流暢性の錯覚」と呼ばれています。綺麗に整理されたノートは“読みやすい”がゆえに、頭に入ったように“感じてしまう”のです。
でも、「分かる」と「思い出せる」は、まったく別の次元の話です。試験で必要なのは“答えを引き出す力”であり、これはノート作りでは鍛えられません。
さらに、資格のテキストは基本的に膨大です。数百ページもの内容をノート化している時間は、仕事や家庭を抱える社会人にはほとんど残されていないのが現実です。
ノート作りが悪いわけではありません。でも、あなたの目的は“きれいなノートを作ること”ではなく“合格すること”のはず。だからこそ、一度立ち止まり、勉強の流れを見直す必要があります。
忙しい社会人に必要なのはインプットよりアウトプット:記憶が残る学習の核心
私がこれまで様々な「勉強法」を学習し、実際に行政書士や社会福祉士など複数の資格試験に合格して見えてきた根本原則があります。それは、記憶はインプットではなく、アウトプットで定着するということ。これが忙しい社会人が最短で合格するための“核”になる考え方です。
心理学の世界では“テスト効果”として繰り返し証明されています。テスト効果とは、「覚えたことを思い出す作業をすることで、記憶が定着していく現象」のこと。
言い換えれば、学習は、“思い出す”という行為によって初めて脳に刻まれるのです。
忙しい社会人がインプット(ノートまとめ・読書)中心で挫折しやすいのは、ここに理由があります。
- 完璧に理解しようとして進まない
- ノート作りが目的化してしまう
- 読み返しても覚えた気にしかならない
- 過去問に入る前に時間切れになる
- しかし、「勉強している気にはなれる」
だから、インプット中心の学習は「努力が報われにくい」構造になってしまうのです。
一方、アウトプット中心の学習に切り替えると、理解は自然と深まり、記憶はどんどん強くなっていきます。そして何より、“進んでいる実感”が得られるため、学習がストレスではなく「積み上がっていく喜び」に変わります。
なお、勉強法によっては「過去問だけ解いていればOK」ということを言っているものもあります。本当に時間がなければ最後の手段としてこの考えもありだと思いますが、過去問だけでは「全体像がつかめない」ので、テキストを読む事は必須です。
テキストの効果的な読み方については、こちらの記事もご覧ください。
渡辺式・最短合格のアウトプット法7ステップ
ここからは、あなたの勉強を「実際に」変える方法をお伝えしていきます。このステップは、行政書士、社会福祉士、介護福祉士、ケアマネージャー、簿記2級など、私自身が合格してきた資格試験で実践し、成果を出してきた方法であり、どんな資格でも通用する「普遍的な学習法」です。
多くの人は、完璧に理解してから過去問に取り組もうとします。ですが、それは“最も遠回りの方法”です。なぜなら、どんなにしっかりテキストを読みこんでも、試験に通用する記憶としては定着していないからです。
また、資格試験の出題は、テキスト全体の一部に集中している傾向が高いため、テキストを全部理解するより、「出るところ」から理解した方が圧倒的に効率がいい。過去問は「どこが大事か」を教えてくれる最強のナビなのです。
初めて過去問に取り組むと、ほとんどの人が心を折られます。「全然わからない」「何も覚えてない」と。
でも、それが正常です。むしろ「分からない状態で触れる」ことが重要なのです。なぜなら、人間の脳は「知らない」と自覚した瞬間に学習のアンテナが立つからです。
“わからなさを知る”ことで、次に読むテキストが圧倒的に理解しやすくなります。だから、気にせず最後まで走り切ってください。
過去問を解いたら、正解できた問題に鉛筆で×印をつけます。✕印は「理解済み」を示す印であり、後で復習する時に「飛ばしていい問題」を表します。
この✕印が増えていくと、視覚的に「理解が進んでいる」ことがわかり、勉強が前に進んでいる実感を得ることができます。TODOリストで「やったことを消し込んでいくことで、達成感を味わう」感覚に似ています。
逆に無印の問題は「まだ理解していない」ということ。分からなかった問題は、解説をしっかりと読んで理解しましょう。解説が不十分であればテキストに戻ります。
鉛筆で印を付けるのは、後で印を消す可能性があるからです。一度×印が付いても、後で復習する時に「また忘れている」ということが起こります。その時には×印を消して「未理解」に戻すのです。
忙しい社会人が学習を継続できるかどうかは、“迷わず効果的に復習できる仕組み” を作れるかにかかっています。✕印学習法は、そのための視覚的かつ強力な武器です。
試験勉強を効果的にできるかどうかのカギは「復習の仕方」にあります。多くの人は、過去問を最初から最後まで何周も繰り返しますが、それは効率が非常に悪い。なぜなら、理解している問題にも毎回時間を奪われるからです。
限られた時間を最大限活用するために、“未理解問題だけ”を高速で反復します。
やることはシンプル。
- 無印の問題だけを解く
- 正解したら✕印に変える
- 間違えたらすぐ解説を読む
- 理解したらすぐ次へ進む
これを繰り返すだけです。
「わからない → わかる」に変わる瞬間が短時間で何度も起こるので、学習効率が爆発的に上がります。
すべての問題に✕がついたら、その科目は卒業です。この「一段落ついた」という感覚が、資格勉強においては想像以上に重要な役割を果たします。
忙しい社会人は、モチベーションが折れやすい。だからこそ、細かい成功体験を積み上げる必要があります。
科目単位で“クリア”していく感覚は、ゲームのレベルアップに似ています。心理的な報酬が得られるため、
次の科目にも自然と進めるようになります。
学習の本質は「忘却との戦い」です。1周目で✕がついていた問題も、時間が経って見直すと「分からない」ということがあります。
これは、「まだ確実に理解できていなかった部分が浮き彫りになった」ということです。ここを潰すことが、合格点を安定させるうえで極めて重要です。
2周目の目的は、「復活した弱点を見つけて潰す」 こと。この「仕上げ」の工程ができれば、あなたの得点力は飛躍的に安定します。
2周目が終わったら、3周、4周と回していきましょう。どんどん「分からない」問題が無くなっていくのが実感できます。最終的に「何度やっても全問正解」という状態になれば、「これで受からないはずがない」という自信を持つことができます。
読むスピードが上がれば、あなたの勉強はもっと楽に進みます
資格試験の勉強でつまずいてしまう人の多くは、“理解力の問題”だけではなく“読むスピードの問題”を抱えています。どれだけ正しいアウトプット法を実践しても、そもそもテキストを読むのに時間がかかってしまえば、過去問を回す時間も、復習する余裕も生まれません。
逆に、読むスピードが少しでも上がると、学習の流れは驚くほど変わります。テキストの理解が早まり、過去問に触れる時間が増え、復習の回転数が上がることで、記憶の定着力も自然と強くなる。
つまり、読解スピードは“合格率そのもの”に直結する力なのです。
そこで、忙しい社会人でも今日から実践できる「本を速く・楽に読むための3つのポイント」無料動画を用意しています。
1:文字を“かたまり”で捉える
2:視野を広げて“かたまりのサイズ”を大きくする
3:視点移動を最適化して“読むテンポ”を速くする
これらを実演形式でわかりやすく解説し、すぐに身につけるための「3つのポイント実践ワーク」も無料でついています。アウトプット学習をもっとスムーズに進めたい方は、ぜひ今すぐ受け取ってください。
次のステップ:読書の質を上げると、勉強効率はさらに加速する
ここまで、色々な観点から「資格試験の勉強法」について見てきました。様々な戦略や考え方がありますが、資格試験の勉強をするためにもっとも根本にあるのは「読む力」です。
次からのページでは、読書術の本質についてお伝えしていきます。資格試験はもちろん、仕事、学び直し、副業準備など、“すべてのインプット” の質が一気に変わる内容です。
あなたの学習効率を、ここからもう一段引き上げていきましょう。
👉【次のステップへ】「速読と読書術」へ進む(準備中)
よくあるご質問(FAQ)
A:ノート作り自体が悪いわけではありませんが、合格というゴールから見ると、優先順位は高くありません。ノートに時間をかけるより、過去問を解いて「わからないところだけをテキストで確認する」ほうが、限られた時間でも得点力につながりやすくなります。不安な場合は、まず1科目だけでも「ノートなし+過去問中心」を試して、効果を体感してみてください。
A:はい、大丈夫です。むしろ「ある程度理解してから」と待つより、1科目を軽く一通り読んだ段階で、早めに過去問に入ることをおすすめします。最初はわからない問題が多くて当然ですが、その「わからなさ」を体験することで、テキストを読み返したときの理解度が一気に上がります。
A:何周と回数で決めるより、「未理解の問題がなくなるまで」を目安にしてください。速読研究会式では、正解できた問題に✕印をつけ、無印の問題=未理解として管理します。まずは1周目で全問に✕がつく状態をつくり、その後の2周目・3周目で、時間が経って解けなくなった問題(✕がつかない問題)を集中的に潰していくのが効率的です。
A:忙しい社会人には、「完璧な1日」ではなく「続けられる1日」をつくることが大切です。たとえば、1日5分でも構いません。過去問を1問だけ解いてみるでもいいでしょう。ポイントは、どんなに短い時間でもいいから「続ける」ということです。
A:速読は特別な才能ではなく、「文字の捉え方」「視野の使い方」「目の動かし方」をトレーニングすることで、多くの人が今より速く、楽に読めるようになります。読むスピードが上がると、テキスト読解にかかる時間が減り、その分過去問や復習に回せる時間が増えます。結果として、アウトプット量が増え、試験の合格率アップにもつながります。
著者プロフィール

渡辺篤志:「株式会社いろどり」代表 「速読研究会」主宰
100冊以上の速読術・読書術・勉強法を学び、「これなら誰にでも習得できる」という独自のトレーニングメソッドを作り上げ、10年以上に渡り2000名以上に指導。著書に「身につく速読、身につかない速読 ~1冊1時間を目指す、挫折知らずの現実的速読トレーニング~」がある。
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